140年前のピアノ、謎のSTRAUSS。

畏友 Cogeleau君より情報が届いた。朝日新聞 Digital に、静岡市葵区の服飾店が「140年前のピアノ譲ります」と張り紙を掲げ、引き取り手を捜しているという。(以下、矢吹孝文記者の記事から抜粋する。)ピアノは、服飾店「カフィーラ・トンボヤ」の奥にあり、木彫りのバラなどの装飾が施され、鍵盤の上には金色の燭台(しょくだい)が突き出ている。従業員が「鍵盤は象牙だと聞いています」と教えてくれた。

「140年前」とした理由は、ピアノ正面の「STRAUSS(シュトラウス)」という銘板に「1881」の数字があるからだ。1881年なら外国製の可能性が高い。銘板を読むと「貿易産業展示会 1881年 ハレ 展示会地域 王国、ザクセン・アンハルト州、チューリンゲン諸邦」と書かれていた。ハレでは1881年、大規模な貿易産業展示会が開かれた。楽器部門でもピアノなど約40点が展示されたようだ。楽器産業の文化史を研究する一橋大の小岩信治教授(音楽学)や浜松市楽器博物館によると、この展示会で表彰されたメーカーの製品の可能性があるという。当時は賞を取った展示会の紋章をピアノにあしらうことが一般的だったためだ。「STRAUSS」と同名のメーカーはカナダやフランス、米国にもあったといい、ドイツ国外から参加した可能性もある。鍵盤は今の一般的なピアノより高音が三つ少ない85鍵。現在の88鍵になる直前の姿で、19世紀後半から20世紀初頭の特徴だという。燭台は実際に使われたとみられる。欧州にまだ電灯が普及していなかった19世紀はろうそくで楽譜を見たといい、小岩さんは「様々な機能がそぎ落とされる前のピアノの姿がわかる」。カタログの楽器部門にある出展企業には「STRAUSS」はない。ブランド名が別の場合が多いが、「受賞がニセモノという可能性もある」と小岩さん。「模倣品も、当時の流行を調べる上で重要」なのだという。(矢吹孝文)

85鍵のピアノ。これは細幅鍵盤だった可能性がある。さっそくトンボヤ社長に手紙を書いたが、返信がない(届かなかったらしい)。直接電話したら女性の店員が出た(写真の人かも)。事情を話して計測してもらったら、「16,1センチです」とのこと。161㎜だった。今の標準鍵盤は1オクターブ165㎜だから、やはり若干細幅鍵盤ではあった。とはいえSteinbuhler-Walter社のDS6.0 (151~153㎜)よりは広い。すでに紹介したように、整形外科医の 酒井直隆氏は、古い鍵盤楽器のキーボード巾について論文で発表している。古いキーボードは、現代と同じ幅だったが、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、スパンは3~6㎜減少した、とのこと。このSTRAUSSピアノも、その名残だったようだ。
さて、このピアノを譲り受けて、弾けるように修復できるかどうか。フジコ・ヘミングが母親から譲り受けたブリュートナーのグランドピアノを修復するのに、800万円かかったという(調律師ISAMU. H氏談)。外側の木部は残して、中の金属部分を全取っ替えしたらしい。それができたのは、メーカーのブリュートナー社が今も現役であるから。(ウィーンの真ん中にショールームがある。)STRAUSS社の所在も不明なのでは、修復はほぼ無理だろう。などと思っていると、トンボヤ社長から電話があった。引き取り手がすでに見つかったという。「それはよかったですね」と、一応言ったけれども、ちょっと残念。いいなあ、燭台つきピアノ。電気のなかった時代のバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなんかを弾いたら、音色が違うのではないだろうか。

 

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