人類の4分の3が排除されています。

kurze fingerの右手のスパン. 20.5㎝です。

2015年のオーストラリアの成人男女のスパンの測定結果.

私(kurze finger)の右手は親指から小指まで20,5㎝あります。このスパンは日本人の中でも小さい方でしょう。何らかの統計を捜して見つからないので、日本音楽教育学会に問い合わせました。すると、無いらしいのです。事務局から「ご希望に添えるようなご返答を差し上げることができないとの事でございます」という丁寧な返信をいただきました。「音楽教育学会」ですよ。それが日本人の手のデータをもっていないというのには驚きました。オーストラリアの成人男女のスパンを計測した2015年のデータがあります。青い点が男性、黒い〇で囲んであるのは世界的評価のピアニストです。22.3㎝あたりから27.5㎝あたりに分布しています。赤い点が女性で、黒い点を内包しているのが、国民的評価つまりオーストラリア国内で評価されているピアニストです。(男性にもいます。)私のスパン20.5㎝は、男性の最低レベル、女性の平均値より、ちょっと広いあたりに位置します。

豪州のピアニストのスパン

左の表は同じくオーストラリアの統計です。「ピアニストの」とあるので、すでにスパンの広い方々のデータということになるでしょう。平均値は男性で22.6㎝、女性で20.1㎝となっています。(詳しく知りたい方はkurumi.marronさんの『細幅鍵盤随想記』をご覧ください。http://littlehands782.blog.fc2.com/blog-category-19.html#20150227a

* 30年前の日本のデータがあります。
日本人も何もしてなかったわけではなく、平成元年(1989年)のデータがありました。月刊『音楽広場』10月号の「とじこみ研究特集」として、「ピアノと子ども」が載っていました。主旨は、大人用のサイズのピアノで練習する子供たちが、いかにつらい思いをしているか理解しましょう、というものですが。(当時国立音楽大学教授の繁下和雄氏の責任編集になるものです。)ここには子供たちと、音大生女子、音大生男子のスパンが出ています。

平成元年の国立音大の調査結果

「学生81人の協力を得て」(54頁)とあり、オーストラリアの500人弱と較べると淋しいけれども、とにかく当時としては貴重な統計です。これをみると、女子音大生のスパンの平均は19.5㎝ぐらい、男子音大生のスパンの平均は21㎝弱ぐらいに見えます。(手書きなのでよく分からない。主眼は子どもの手のスパンにあるわけです。)

*「音大生もピアノ失格?」とは・・・
上記の特集に、不思議な一節がありました。「ヨーゼフ・ガート」によれば「ピアノを無理なく弾くためには(…)10度にとどく」手の大きさが必要だ、とのこと(57頁)。すなわち211.5mmのスパンが必要だとか。そうすると(上記の)表をみると「音大生女子はもちろんの事、音大生男子のほとんどが”ピアノを弾くには無理がある”ということになってしまいます。」(57頁)――というわけで、見出しが「音大生もピアノ失格?」になっています。

「子どもとピアノ」の一節

おたわむれも、たいがいになさってくんなまし。たかが鍵盤楽器、道具ですよ。それに対して音大生が、人間サマが失格ですと? 本末転倒です。失格の烙印を押されるべきは、因襲サイズの鍵盤楽器の方です。Conventional Keyboardsを崇拝している関係者の方々です。
因襲サイズの鍵盤楽器がこの際失格するのであって、より幅の狭い鍵盤楽器があれば、それが合格するのです。

 

*人類の四分の三を排除する楽器

22.4㎝で区切った分布図. ほとんどの人が排除される.

上記のkurumi.marronさんのブログによれば、「すべての『世界的ピアニスト』が8.8インチ(約22.4cm)以上のスパンを持っている」そうです。たしかに、ただ10度届くだけでなく、弾きこなすためには、その程度の余裕が必要だろうと思います。そこで既出のオーストラリアの統計を、22.4cmのところで区切ってみました。太い黒線で区切ったところが、10度を弾きこなせない方々です。こうしてみると、女性のほぼ全員(なぜ女性は抗議しないのだろう?)、男性もほぼ半数(ないしそれ以上)、弾きこなせないことになります。
こおんな楽器が、小学校にも、〇〇音楽教室にも、でかい顔をして鎮座しているのです。この分布図は2015年のオーストラリアの統計だから、あきらかに体格の貧弱な日本人は、さらに排除されているでしょう。
人類の四分の三を排除する、因襲サイズの鍵盤楽器「だけ」を信奉するのは、いい加減やめるべきときではないでしょうか。

 

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