ヨーロッパ・ピアノ指導者協会総会でDS 6.0のピアノが試弾・公開
2月29日から3月3日まで、スイスのルツェルン大学で、第46回ヨーロッパ・ピアノ指導者協会総会が開催された。(European Piano Teachers Association, Lucerne, Switzerland)
その70頁におよぶプログラムの2頁目に、シュタイングレーバー(バイロイト)の交換可能なDS 6.0キーボードが掲載された。
The respectful piano とは、(英語は専門でないので自信はないが)、配慮に満ちた、つまり手が小さくて届かないピアニストのことも尊重する、ピアノという意味ではないだろうか。Staingräberでは、DS 6.0の鍵盤を、瞬時に標準鍵盤と入れ替えられるらしい。図版のキーボードは上から、DS5.5、DS 6.0、標準鍵盤である。
今回の総会のプログラムの表紙には「Changes Visions & Evolutions in Piano Music」とあるから、鍵盤についてのChangeも意味されている、かもしれない。
3月1日(金)の16時15分から、ウルリーケ・ヴォールヴェンダー教授(Ulrike Wohlwender)が講演した。「手が大きくなるピアノ」というテーマだ。
写真右がヴォールヴェンダー教授。
このテキストをDeepLで日本語訳し、ボク Kurze Finger が補正したものをはりつける。
「手が大きくなるピアノの鍵盤
2020年1月、HMDK(Staatliche Hochschule für Musik und Darstellende Kunst Stuttgart. 州立音楽・表現芸術大学シュトゥットガルト)はプロトタイプのシリウス6.0を練習室に迎え入れた。それ以来生徒、教師、ゲストが、1オクターブにつき半音ずつ自分の手が「成長」していく様子を体験しています。標準的なキーボードで10度に届くピアニストでさえ、より自由で力みのない演奏感覚に満足しています。より正確に演奏し、より繊細に和音のバランスをとることができるようになります。ほとんどの人が適応の早さに驚きます。そして、まるで魔法のように聞こえるでしょうが、多くのピアニストが6.5インチ規格の標準鍵盤でも、ある程度の弾きやすさを(違和感なく)保っているのです。
1指から5指までのスパン幅は、やっと8度(1オクターブ)届くものから12度以上届く人まで、様々である。女性のスパンの平均値は男性より2,1cm低い。スパン幅が小さいこととPRMD(Playing-related Musculoskeletal Disorders おそらく:「演奏に起因する筋骨格の障害」。Googleの検索では日本語訳が出てこなかった。何故でしょう?日本で研究されていないからだ!)の因果関係は立証されている。ピアノで演奏可能なレパートリー(およびコンクールの優勝者リスト)の手の幅を考察すると、1880年のピアノ鍵盤のDIN規格は、女性の87%、男性の24%にとって大きすぎるように思われる。
私たちにはお手本がいる: ヨーゼフ・ホフマン(6.3インチ鍵盤の発明者)、キャロル・レオーネ、そして国際ストレットピアノ(細幅鍵盤)フェスティバルのピアニストたちだ。(ほとんどがアメリカのスタインビューラー社のDS6.0かDS5.5)、そしてダニエル・バレンボイムだ。約6.2インチの彼の「ニューピアノ」は、1785年から1825年のフォルテピアノに相当する。
シュトゥットガルト2024 ヨーロッパ初のシリウス6.0互換鍵盤を搭載したスタインウェイ&サンズDがステージに登場。
ウルリーケ・ヴォールヴェンダー。シュトゥットガルトHMDK(ドイツ)ピアノ教育学教授。独創的な指導法、初級曲の音楽的質、グループでのピアノ指導、音楽生理学に関する著書は、アメリカ、南コリア、中国で翻訳出版されている。クリストフ・ワグナー教授との14年にわたる共同研究により、ピアノ演奏と音楽家医学の分野で研究を続けている。2021年、EINPPブラジルに招待される。」(以上)
さてお立ち会い、ドイツ(Baden-Württenburg)の大学教授が、「1880年のピアノ鍵盤のDIN規格は、女性の87%、男性の24%にとって大きすぎるように思われる。」と公言しているのですよ。そしてヨーロッパ・ピアノ指導者協会の総会で、DS 6.0のピアノが公開、試弾されているのですよ。
世界はここまで来ている。さあて、日本音楽教育学会では、これまで日本人の手のスパンすら、統計を取ってこなかったのですが、どうします? 音大もメーカーも、このまま居眠りを続けますか?
EPTA のURLを貼りつけます。全プログラムをダウンロードすることもできます。
EPTA