Dr. S. が試弾しました。
Dr. S. が東海地方から上京して二種類の細幅鍵盤を試弾しました。
Dr. S のスパンは21㎝。(標準鍵盤を弾きこなすために必要とされる24㎝~26㎝には満たない。)それだけではなく、ご覧のように男性的な、ごつごつした指なので、黒鍵間の白鍵上部、この狭い空間に指が入らない。
DS5.5のピアノの白鍵上部を打鍵するには、指が太すぎる。
実はこの日の午前中に、Dr. S. は文京区の「東京ストレットピアノ」でハイルン・ピアノを試弾してきた。ハイルンはDS 6.0で、白鍵の幅は15/16サイズなのだが、黒鍵の幅が標準鍵盤のそれと同じなので、白鍵上部は狭い。おそらく難儀したことだろう。
Dr. S はピアノ再開組で、高校生のころピアノをやめてから40年のブランクがあるという。その割にはショパンの数々のエチュードなどレパートリーは広いし、持参の楽譜(アメリカから直輸入しているという)も多様で、知識は豊富。談論風発で教えられることが膨大にあった。
普段の練習では、左手の届かない部分は右手でカバーする、というような「やりくり演奏」をしていたのだが、初めて試弾するブラザー・ピアノ(6.0)では、その必要がなさそう。「何とかなりそうですね」と言っている。
以下に、そのあとDr. S. から届いたメールを紹介します。
「話には聞いていたものの、Internetで見てはいたものの、実物は体験したことがなかった縮小鍵盤を、初めて実際に試弾する機会に恵まれ、かねてから手の小ささ・指の短さのハンディに悩まされて来たことを思い起こし、興味津々で試弾しました。
まずは楽器を「演奏」する前の段階として、鍵盤に慣れることに集中。意識していなくとも、長年にわたって指に、そして大脳運動野・小脳に染みこんだ、標準鍵盤の空間認識・距離感は容易には抜けない。それを無理矢理縮小鍵盤に合わせるべく、視覚情報を頼りに運指を矯正しようとするのだが、左右10本すべての指を常時監視するのは不可能なので、どうしても旧来の勘で指が動いて外してしまう音が出てしまう。
しかし、しばらく試弾している内に、これは慣れの問題、訓練で解決できそう、縮小鍵盤で毎日ハノンを練習すれば縮小鍵盤に対する感覚は身につくだろう、との予感は感じました。
ただし、一口に縮小鍵盤と言っても、縮小割合の違いだけでなく、白鍵のみオクターブ幅を縮小し黒鍵は標準鍵盤のままのもの、白鍵・黒鍵両方を比例して縮小したもの、とバラバラで、縮小鍵盤そのものの規格がないことから致し方ない面もあるが、自分の手・指に適した鍵盤を探し当てるには試行錯誤が必要、と強く感じた次第です。
手・指のハンディがあると、好きな作曲家・曲でも指が届かずに弾けず残念なことはあるし、無理して手を広げて弾くと指の繊細なコントロールができない。関節炎・腱鞘炎のリスクも高まるし、なにより弾いていて楽しくない。小さな手・短い指に悩んでおられる人はそこそこいらっしゃるはずだが、なかなかそういう人たちの声は上がらないし、具体的な要望が出ないとメーカーも動かないし、で何も始まらない。まずは同じ悩みを抱える人たちが集まって問題点・解決策を集約して運動していくことが大切と感じた一日でした。貴重な体験をさせていただきありがとうございました。」