三枝成彰・哀しみのモーツァルト

12月5日はモーツァルトの命日。今年で第八回目になる「三枝成彰・哀しみのモーツァルト」がサントリーホール・ブルーローズで開催された。

アーク・カラヤン広場にはクリスマス・ツリーの電飾が。
前日にバルセロナから帰国したばかりの三枝成彰氏は車椅子ながら、コメントし、全体の指揮を取っていた。

(公演終了後にホワイエで。)
1.トルコ行進曲・バトル!
何と言っても今回の目玉はトルコ行進曲・バトルだ。

まずは、ファジル・サイのトルコ行進曲・ジャズを見て欲しい。

次に、アルカディ・ヴォロドスのトルコ行進曲を。

おそらく、これらの目眩くようなアレンジに触発されての、日本の作曲家の競演になったのだろう。三枝成彰、池辺晋一郎のトルコ行進曲は(素人には分析できないけれども)、ポリリズム、コラージュ、モンタージュ、パッチワークなども駆使した、interessantな曲になっていた。最後の横山幸雄氏の編曲は、三日前に完成したという。
特筆すべきはピアノの黒木雪音嬢。担当の6曲を暗譜で弾き切っていた。体幹のしっかりした、信頼できるピアニストが現れた。
2.レクイエム。

小編成の楽団と4人のソリストによるレクイエム。これはこれで感慨深かった。
かなり以前にHearts Music SchoolのH先生に和声学を習ったことがある。
藝大教授・長谷川良夫の『大和声楽教程』の練習問題を解くのだが、すべて「四声」つまりソプラノ、アルト、テノール、バスの声部の音を策定する作業だった。

一問ごとに、8度の平行移動はダメ、第三音の重複はダメ、増二度の下方移動はダメ、上方移動もダメ、導入音の重複はダメ、などなど禁忌に触れてはアウトになった。楽譜ノートは真っ赤。半年ほどで挫折した。
今回ローズルームの目の前に四人の歌手が立って、天才モーツァルトによる「四声」の模範解答が歌われているのだった。希有な体験だった。
3.ロンド イ短調 K.511
これには個人的な思い出がある。ボクは「冥府のロンド」と勝手に呼んでいる。数年前に友人K氏が、この曲を弾いて欲しいと言ってきたので、練習してみた。何とも変な曲。短調と長調が交錯し、何を言いたいのか分からない。得体の知れない曲。調べると、モーツァルトの父レオポルトが病気になり、友人が死亡した時期の作曲だという。練習の途中でボクはこの曲をやめた。命が惜しい。
勝手な想像だが、モーツァルトは半音階進行を通して、彼岸に行っているのではないか。長調も、イタリアの青天ではなくて、あの世の薄明かりと感じられる。*こんな一風変わった曲をしっかり弾ききった黒木雪音嬢の度量と感性には、賛嘆するしかない。
4.モーツァルト年表
この日のプログラムに挟まれて、モーツァルト年表があった。全体でA1,つまりA4の8倍の大年表である。小澤純一氏製作。(図版は一部。)

この年表だけでも、すごいクリスマス・プレゼントだ。
メセナの木下グループ、ハウス食品グループ、KAZENグループに感謝する。
この特異なイヴェントに誘ってくれた、畏友Y氏にも感謝。

普及のためブログランキング上位を目指しています。クリックをお願いします。 にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村
こちらもよろしく。 にほんブログ村 クラシックブログ ショパンへ
にほんブログ村