白塔歌仙会「雷鳴や庭木一斉」の巻

毎月粛々と月例会をやっているのですが。多忙と怠惰のため(まあ、ふつうこれが原因ですね)、なかなか巻き上がった歌仙をアップできていません。この間、ふた山ほどしんどい仕事を片付けたので、久しぶりに36句を披露いたします。
まず脇句の選定があります。通常、7月例会の立句(発句)は、順番により果穂さんが作り、6月中旬に同人に伝えられます。ただちに同人は脇句(候補)を、元締めの恆雄さんに送付する。元締めは作者名を伏せて、脇句候補を連衆(脇句案を出した同人)に送付し、各人そのなかから3句をノミネートする。それを元締めが集計するわけです。

こうして選ばれたのが、拙句(七緒)というわけ。なぜ同じ4票なのに選ばれたのか、というと、起句の作者である果穂さんが、3句ノミネートの際に、この02をも選んでいたから
こうして6月中旬には、すでに7月例会の起句、脇句が決まっていて、連衆は7月1日にスタートする歌仙を、腕を撫して、あるいは固唾を呑んで、待ち受けます。
以下に、巻き上がった歌仙を貼り付けます。
白塔歌仙会第四四三回七月例会「雷鳴や庭木一斉」の巻治定。  さて、今回はやれる範囲内で、個々の付句について、独断と偏見に満ちた解説を施します。文句のある連衆は、ご自分のホームページで反論なさればよろしい。
1雷鳴や庭木一斉滴れる         果穂
2 虹立つらしき児等の歓声       七緒
3前を行く水玉きらり髪揺れて      笈羅
4 サリー閃く頭上の大瓶        加寿女
(中近東あたりに行ったようです。それゆえ、西風が。)
5西風に吹かれて仰ぐ宵の月       悦子
6 芒の穂影に頬をなでられ          恆雄
7野球帽被る案山子は17番       和子
(WBC以降、大谷君は一般的人気者に。)
8 恋する虫はプレーの妨げ       果
(打席でタイムを取ったのは、虫がまといついたから。そのあとホームラン。
ボクはこれを、BS1でリアルタイムで見ていた。)
9忍び逢う宿に露天のかけ流し      七
10 どうぞお楽に裃脱いで        笈
(一般に、恋の3句目は笑え、と言われる。たとえば「既知との遭遇すれ違う妻」とか。)
11無人駅ひとり待つ間の日向ぼこ     加
(佳句だけれども。やや9句に戻る感じがある。)
12 だれが置いたかベンチに蜜柑     悦
13神渡し弦月嬲る群雲や             恆
14 いじめっこ避けて遠廻りしよ      和
15叱られて気分はブルー帰り道        笈
16 なじみのスナック突き出す飯蛸    七
(14,15は小学生の世界。これをサラリーマンに見立てた。蕗味噌にすればよかった。)
17ほろ酔いの眼にやさし花明り      和
18 遍路の笠に俤しのぶ         恆
19いにしえの聖者の御杖蘖(ひこばえ)す 悦
 (ドイツ文学関係者なら、タンホイザーを連想するところ。)
20 ルビーを飾る王妃の柩         加
(佳句だけれども、前句とのつながりが不鮮明。)
21スペインの海辺のメニュー亀の手でる  果
22 伸ばしたもののすぐ引っ込める     笈
(これも面白いかも。でも、一工夫ほしい。海外が苦手なのかも。)
23ながむしの幾重に廻るこの世かな    恆
24 昼寝覚めても戦は止まず       和
25オキシトシン敵と味方を作るとか    七
(NHK特集で見た。子育て、身内、その愛情のメカニズムが、よそ者、敵をも作る。)
26 お気に召します秋駒の騎士      果
(前句との繋がりが不明。)
27林檎食むわが運命の朝迎え       悦
28  そっと小鳥くる窓開け放ち      加
 (ここは大いにトラブったのだが、省略。)
29奏でるは月光の下篠笛か             笈
30 五条大橋わたる牛若         七
31東山三十六峰晴ればれと        和
(残念。牛若丸は、月光の下、女装して笛を吹きつつ弁慶を翻弄する。東山三十六峰「眠る頃」ではないでろうか。)
32 歌仙に託す孟冬の宴         恆
33唐紙の破れを塞ぐ裕次郎            果
34 真っ赤に錆びたナイフ見付けた    笈
35居合抜き本丸跡は花盛り        加
36 ふらここ揺れて鎮もる夕べ      悦
今回は以上でお終いです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。