七月歌仙「百合の丈」の巻
類句は少ないと思う。男性俳人は水切りなんかしないし。女性俳人は、日々の雑用ぐらいにしか捉えていないのかも。
なぜ百合か。細幅鍵盤を試弾に来る人が、先月は二人いた。未知の住居に踏みこむと、匂いが気になる。それゆえ匂い消しに
百合の大枝を一本、国立市中央フラワーで購入して、毎日水切りをする。10日ぐらいは保ちます。
水切りに日々詰まりゆく百合の丈 七緒
銭苔蔓延るタワマン屋上 恆雄
天と地の夜の輝き愉しめる 和子
次の休みは川舟流し 悦子
角立てて折り紙に似た白桔梗 果穂
月が見えたよ跳ねるウサギは? 笈羅
ウ 二つ星はるか隔てて杵と臼 恆
泉の車両に満男が飛び乗る 七 『男はつらいよ、寅次郎の休日』で、日田に向かう泉ちゃん(後藤久美子)が新幹線に乗る。見送りに来た満男が、発車ベルと共に、思わず車両に跳び乗る。そう来なくっちゃ!!
不真面目なアイツが真面目な恋をした 悦
畑仕事も趣味の一つに 和
本業が遊びの世界それもあり 笈
ラーメン券買う新紙幣にて 果
月凍てる部活帰りの女学生 和
まばゆいばかり大根並ぶ 笈
赤い風車ラインダンスの靴が鳴る 七 一度だけ、モンマルトルのムーラン・ルージュの客となった。ダンサーは女丈夫。腰蓑のようなビーズが回転して頬に当たった。
ツイッギーは妖しい踊り子 恆
花冷えに熱湯落とす珈琲自慢 果
常連客のスミレのカップ 悦
ナオ 盃満ちて白魚の柄浮かび立つ 恆
床の間の軸確か虚子の句 和
あれあいつ挨拶したけど誰だっけ 笈
やたら手を振る都知事候補は 七 駄句を。「嘘つきが和服で登るピラミッド」。
ヤジ馬も笑って黙殺汗の顔 悦
夏陽に光る小さなシャベル 果
ままごとのママはお昼寝風さやか 和
投票デートで独裁排除 恆
ラブコール届かぬ周庭、スー・チーに 七 香港では周庭が7ヶ月収監されて、カナダに亡命。ミャンマーではスー・チーが禁固33年。習近平・中国の暴虐は千年前のモンゴルとどう違うのか。国際社会はどう規制できるのか。
英国領の遥かな香港 果
戦場に残る友あり月いざる 悦
流れ星目に不安もよぎる 笈
ナウ 野分去りもぬけの殻の朝の空 恆
フランスパンを抱えて散歩 和
七年のホテル暮らしをあとにして 悦
帰りなんいざ竹林の里 七 イメージとしては『トゥーランドット』二幕前半の、ピン・ポン・パン三大臣の「田舎に帰りたい」歌。大臣がホテル暮らしをするはずもないのですが。お目こぼしを。
花守が去来に捧ぐ花一輪 笈
踏み心地良きボティチェリーの春 果