六月歌仙「田植え歌」の巻
笈羅さんの立句で賑やかに始まった。
畔と田で響き交わせる田植え唄 笈羅
編笠脱いで仰ぐ大空 恆雄
縄綯いは父祖伝来の匠にて 悦子
餡も求肥もあの菓子司 七緒 「鮎」とやりたかったが、夏の季語なので避けた。
手土産は「アフター・エイト」宵の月 和子
初秋の花嫁角隠しする 果穂
ウ 振袖にひろがる花野ほの明く 恆
これで会えると八百屋の娘 笈
身代わりの袈裟を殺めて出家する 七 白粉臭い句が続いたので。袈裟と盛遠から。板東武者・遠藤盛遠(のち文覚上人)のことは、磯崎憲一郎『鳥獣戯画』で知った。
旅の琵琶弾き語る顛末 悦
道端の自然の摂理にふり替える 果
蝋石で描くまあるい地球 和
裏側も探られる世や冬の月 七 中国が月の裏側に向けて探査機を送った。
乙子の朔日鉱泉みつけ 恆
さあ遊ぼ鬼ごっこだの隠れんぼ 笈
憧れてるのゼロゼロセブン 悦
花見舟推しの話も面白く 和
紳士の皆様陽炎座へと 果
ナオ影朧ろサラサーテの盤に針落とす 恆
嗚咽を漏らす亡き友の妻 七 内田百閒の小説のママ。
黙って食べるおむすびを焙じ茶と 悦
助っ人さんが猿やっつける 笈
八つ橋が繋ぐ彩り菖蒲園 果
パラソル点々散策びより 和
躓いて寝たきりになる粗忽者 七 気をつけなければ。
終の褥に初恋の夢 恆
煙草屋の看板に惚れ横丁へ 笈
俺のお宝プラモデルバイク 悦
淡き月後姿の猫の毛並 果
むかご飯焚きふるさと思う 和
ナウ砧打つ音も間遠にやがて已み 恆
薄らぎ行くかこの悲しみも 笈
泣きぼくろ忘れがたみの彼女とか 和
チョコの家にもブランコあった 果
もちよった筐をひろげて花の宴 悦
御苑の池に蝌蚪泳ぐころ 七 芸のない挙句で申し訳ない。