鍵盤をアップ、黒鍵間が広くなった

補修前のパンチ

補修前のパンチ

 

4月2日のこと。調律師ISAMU. H氏から電話。「白鍵を上げることによって、黒鍵間のスペースを広くするほかないでしょう」とのこと。なるほど、黒鍵の上辺の巾は9㎜ほど。下辺の巾は10㎜ほど。白鍵の位置が上がれば、両サイドで 0,1mmないし 0,2mm ほど間隔が広くなる。この差は大きい。
ISAMU. H氏が中音部の鍵盤を外して確認すると、バランスレールのピンには 1,5mm の厚さでパンチが入っていた。
これが充分高ければ(ないし、高すぎる場合は)、黒鍵のパンチを低くすることによって高低差を出せる、のであるが、今回は白鍵部分にパンチを上乗せして、2mm の高さにする。それに対応して、フロントレールのパンチも、さらに1mm 高くする。(フロントレールのパンチが浅いと、ハンマーが2度打ちする可能性が出てくるとのこと。)まずは1オクターブの鍵盤だけアップさせて、具合を確かめる。
これで、かなり黒鍵間のスペースが獲得された。OKを確認して、ISAMU. H氏は88鍵すべてについて、パンチの調整をしてゆく。気の遠くなるような、根気の要る作業だ。

これはコロナ禍のお蔭である。ふだん出入りしている帝国ホテルほかのピアノの調律が、出入禁止のためできなくなり、ヒマだったので、このようなヴォランティア調律にお出ましになった次第。細幅鍵盤ピアノにとっては、コロナさまさま、でした。
その結果どうなったか。たしかに黒鍵間のスペースに指は入りやすくなった。ほぼ15/16サイズのブラザー・ピアノを弾く感触で弾くことはできる。とはいえ、やっぱり絶対的に狭い。 Kurze Finger としては、黒鍵間を打鍵する場合は、意識して指を内側に曲げて、白鍵の広い部分を打つように、自分を躾けるほかはない。黒鍵の先端部分が 0,1mm でも面取りしてあれば、この「躾け」もいくぶんかラクになるかも。
そして、この細幅鍵盤ピアノでは、たとえばショパンのエチュード『黒鍵』を弾くと、幅の狭い黒鍵を外してしまうことが多い。これまでのようにアバウトに黒鍵を打鍵するわけに行かないのだ。運指の精度を高めなければならない。手の小さいピアニストを、茨の道が待っている。それでも、届かない8度、届かない10度は、解消される。たとえばプロ野球選手に身長 160cm のチビは、まずいないだろう。本格的スポーツには、それなりに恵まれた身体が必要だ。同様に本格的ピアニストに、スパン(1~5指の間隔)18㎝ という人はいないだろう。それでも、スポンジボールを使った草野球を楽しむオヤジはいくらでもいるし、それは可能だ。同じように、草野球的に、細幅鍵盤で好きな曲を弾くオヤジがいても構わないのでは。それを実現するために、こんな苦労をしなくてはならないとは。いやはや、です。

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