運転免許証を返納した。

やっと返納しました。まあ、かなりのあいだペーパードライバーだったから、返納しても構わなかった。こんな証明書が届いた。

これまで、何かにつけて免許証は便利だったので持っていた。この証明書が同様の効力を発揮してくれるなら、これでもよいかと思う。
手続に訪れた小金井警察署は、下にも置かぬ扱いで、担当の婦人警官も可愛くて、毎月返納手続をしたいぐらいだった。なにしろ団塊の世代がこれから大量の高齢者ドライバーになるのだから、返納が国家的な推進課題になっているのだ。(たぶん)
さてお立ち会い。ボク Kurze Finger は、オーストリアの運転免許証も持っている。


1995年発行の免許証。これでボクは、いま現在でもヨーロッパで車を運転できるのだ。
(もう日本では運転できませんが。)なぜならヨーロッパでは(すくなくともオーストリアでは)免許証の更新はないのです。一度ゲットしたら、そのまま運転できる、それがあたりまえ。日本がおかしいのです
自動車に関する欧州と日本との断絶・格差は、枚挙に暇がない。たとえば車検。(もうかなり以前の記憶になるが)日本ではふつう10万円から15万円は取られていた。もっと以前には25万円ぐらい取られた記憶がある。ところがウィーンでは、一回4,000円ぐらいだった。自動車利用者組合という組織があって、年会費が4,000円ぐらい。(30年前の記憶。でも、今もほとんど変わらないはず。)電話で予約して〇〇工場に乗りつけると、ドンドン、カンカン、あれこれチェックしてくれて、OKが出れば、そのまま走行できる。
自動車利用者組合には(知る限り)二種類あって、国民党系のÖAMTCと、社会民主党系のARBÖとがあった。(社会民主党? なんだか日本にも似たような名前の政党があったみたいだけれども。何をなさっていたのでしょうね? ちなみにギムナージウムや大学の授業料をゼロにしたのは社会民主党です。個別住宅をまとめて6階建ての集合住宅にしたのも。)
ウィーンで車を持っても、車庫証明は要らない。(路肩駐車がふつう。)買換え圧力もない。日本で車を持つと年間50万円はかかる、とかなり以前に言われていた。かりに50年間日本で車を持っているとすると、2500万円になる。ところがヨーロッパ(少なくともウィーン)では、50年間車を持っていても、通算で500万円程度にしかならないだろう、あるいはそれ以下。
なにしろ高速道路は無料で速度無制限。日本のように100㎞/時 をオーバーしたら捕まって、罰金と講習という罰ゲームが待っているわけではない。ウチの近所には、BMWとかメルセデスベンツとか、Volvoとかを飾っている住宅が多いが。そんな高級車を置いている意味が分からない。360㎞/時ぐらい出る車が、日本では100㎞制限なのだ。たとえて言えば、スタインウェイのグランドピアノを買って、「子供のバイエル」以上のレベルの曲を弾いてはなりません、と指導されているようなものだ。
運転免許証の更新、という(ヨーロッパにはない)奇習も、不思議な慣習だ。視力検査ぐらいは、まあリーズナブルと言えなくもない。でも、あの「講習」は何なのか。わかりきった退屈な講習。これは、退職警察官に老後の収入を与えるためである、と、あるドイツ人の特派員が書いていた。講習後に配布される二冊の冊子。誰が読むのだろう?(ボクは1頁も読んだことはない。)紙の無駄、時間の無駄。しかし受講生は、更新免許証が欲しい一心で、誰も文句を言わない、言えない。そもそも5年毎(高齢者は3年毎)の、こういう儀式が必要なのかどうか。
こーんなセレモニーをやっているヒマがあるのなら、なぜあの、東池袋の殺人ドライバーを事前に免停にできなかったのか? 87歳のよれよれ老人に、免許証を更新して、10人の死傷者を発生させた交通警察の責任はどうなっているのか。何のための免許更新だったのか。
お上のことに間違いはございますまいから」とは、森鷗外の「最後の一句」の科白。もちろん、反語である。日本で車に乗っていて、車検、高速料金、車庫証明、速度制限、などなどに、屠所の羊のように唯々諾々と従っているドライバーの皆さんのように。ピアノを弾いていて標準鍵盤が、お上の決めた鍵盤だからと、そのまま弾いて、いや、弾きにくい、とすら考えずに、そのまま弾こうとしていませんか?

 

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