新たな問題が浮上

自分がジャイアントになってしまった。
あれ? オレってこんなに下手だったっけ? と何度も思う。まあ前期高齢者なりに衰えてはいるだろう。バネ指のため親指を曲げて弾くと痛い。でもそれだけではないらしい。
うーむ。細幅鍵盤推進派としては黙っていたいくらいだ。でも実験動物としては報告しないわけにいかない。
鍵盤の巾が狭くなった分、指の太さが増大してしまった。(女性など、指先の細い人は大丈夫。)
標準鍵盤ピアノに左の2,3,4の指を置いたところ。
右に一円玉を置いた。直径はぴったり20㎜(2センチ)である。
指の両側には、若干ながら余裕がある。
演奏の際には、まあアバウトに打鍵しても、そこそこ当該のキーにヒットしていた。

7/8サイズ(DS 5.5)のピアノに、同様に左の2,3,4の指を置いたところ。右に一円玉を置いたが、ほとんどはみ出している。
一円玉だけでなく、4の指、3の指もほとんどはみ出している。2の指はきつきつで、どうやら範囲内に収まる感じ。
これでは当該のキーの中心線を100%の精度で打鍵しないと、となりのキーまで巻き添えにしてしまう。(女性など、指先の細い人は大丈夫。)

左は14歳の少女(中学2年生)の指。白鍵の左右にゆとりがある。
ただし皮肉なことに、彼女は充分なスパンがあるので、細幅鍵盤を必要としていない。

左は標準鍵盤ピアノ(DS 6,5)の白鍵。
巾はだいたい 22,5mm ある。
ン十年間、われわれはこの巾に慣れていたわけだ。ということは、(ピアノは頭で弾くのだそうだから)大脳、小脳、海馬、腕の筋肉、指の腱などが、この巾にアジャストされているわけだ。

これはブラザー・ピアノ。15/16サイズ(DS 6,0)である。
鍵盤巾はおよそ 21mm。一円玉の横にいくらか余裕がある。
ボク(kurze finger)は、これを弾くのに慣れている。違和感はない。
中田喜直によれば、知人や弟子に、サイズについては説明せずに細幅鍵盤を弾かせると、標準鍵盤ピアノと同様に弾きこなして「なんだか弾き易かった」と感想を漏らしたそうである。

これがDS 5,5 のSteinbuhler-Walter社の7/8サイズのピアノ。
一円玉が白鍵をはみ出している。
鍵盤巾はおよそ 19,5mm。
標準鍵盤ピアノから順次、16/16、15/16、14/16(=7/8)と漸次鍵盤巾が狭くなる。わずか1/16がさらに重複しただけで、大きく変化するように思われる。これはもはや別のピアノである。

黒鍵に挟まれた中指。
これでは演奏できない。(女性など、指先の細い人は大丈夫。)
黒鍵を台形に削ることで、いくぶんか解消できるかもしれない。
あるいはさらに黒鍵の先端部分を面取りして、いわば入り口部分を拡張して、ピアニストはその特別区域を狙って打鍵することでヒットできるかも。

沈み込みの深さ。規定通りの 10mm +- 0,5mm に補正してもらったけれども。
鍵盤巾が狭くなったので、相対的に深さが増大したことになる。
実際、演奏中に別のキーに移行しようとすると、指先が隣のキーの側面にひっかかるのである。やや大げさに例えると、ぬかるみから足を引き抜きながら走り続ける感じ。あるいは、ただドレミファソラシドと白鍵を弾くのが、超絶技巧になる。ふつうの100m走が、100mハードルになる。(これについては、女性など指先の細い人も例外ではない。)対策としては、沈み込みを 8,75mm (10mmの7/8)にしてもらうことが考えられる。そうすると、それに呼応して、バランス、キャプスタンなどなども調整されることになるだろう。
海外の積極的な細幅鍵盤推進者、キャロル・レオーネ博士(テキサス州、南メソジスト大学)やロンダ・ボイル氏(メルボルンのピアニスト)がともに女性であることも、むべなるかな、である。
とにかく実験動物たるボクが現在言えることは、ただ鍵盤の巾を狭くすればよいというものではない、ということ。演奏可能にするためには、細心の配慮とスキルが必要であること。
1.太い指が隣の白鍵を巻き添えにすることを避けるには、白鍵の両サイドを面取り、ポリッシュして、はみ出した指をスリップさせる、という対応が可能ではないだろうか。
2.沈み込みが深いために移行が難しい場合、鍵盤の小口を面取り、ポリッシュすることで、移行を容易にする。上のブラザー・ピアノの写真をよく見れば分るように、この15/16サイズの鍵盤は、しっかり面取りされ、ポリッシュされている。黒鍵もまた、台形に成形されており、先端部分は強めに面取りされてポリッシュされている。(もちろん、ペンシルヴァニアのエイリアンは、何もされていない。)
これから日本で7/8サイズのキーボードを製作する際には、「指先が細い人用」、「指先が太い人用」の2種類が製作されるべきではないのか。汎用性のある細幅鍵盤は、かなり難しいと思われる。
日本にはもう一人、Steinbuhler-Walter社の7/8サイズ鍵盤ピアノをもっているS氏がいる。彼は購入時に東南アジアの開発途上国にいて、調律師などに助言も補正もしてもらえなかった。それゆえ彼は、一日10時間の練習を半年にわたって行ない、弾きこなせるようになったという。これはもう、超絶技巧である。
超絶技巧は、練習次第でゲットできる。10度届かない指は、一万時間練習しても、10度届くようにはならない。

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