第406回「宣言解除」の巻

緊急事態宣言が解除される前に立句が提示され、連句が始まるころには、すでに解除されてしまいました。とはいえ〇〇会議室で6時間以上、籠もりっきりになる連句は危険がいっぱい。メールによる文音となりました。https://musil0723.sakura.ne.jp/chopinfan/wp-content/uploads/2020/06/hakutou.-no.-406.-sengen.pdf
hakutou. no. 406. sengen (詳しく鑑賞したい方はプリント・アウトするか、別の端末で歌仙ないし本文をご覧下さい。)
2句。これは互選による。脇句(案)多数から、連衆が3句ノミネートして集計、上位2句から、立句の松陽さんが選んでくれました。ここ国分寺市でも、ツツピー、ツツピーと四十雀が啼いています。
7句。前の6句に「子犬」があるので。Giacomo Balla が描いた有名な未来派の犬の絵があります。
それ以前のBallaは、印象派風のカラフルないい絵を描いていたのですが。教養がなかった。(たとえばローマからベルリンに行くには海を渡らねばならぬ、と思っていた。)社会主義とか未来派とかの ism に焦って乗っかってしまう弱みがあった、と伝えられる。というのも、ローベルト・ムージルの妻、マルタが1898年ごろ Balla に師事していたからだ。Balla はマルタのすばらしい肖像を2枚描いたというが、今日その所在は不明である。東郷青児は『パラソルさせる女』でデビュー、「未来派の画家」というのがキャッチフレーズになってしまった。今も二科展の受賞作品をみると、未来派っぽい複眼視、歪曲画像などが少なくない。100年前の未来派は、テクノロジー、政治、軍事と直結した運動だった(らしい)。ムッソリーニのファッシズムにもつながった。今、二科会の画家たちは、どういう思想で描いているのだろう。
14句。初テレビといえば、ご成婚パレード中継。その頃叔父が眼科医院を開業したてで、大いに流行っていたのだが、このミッチー・ブームのお蔭で患者が少々減ったという。
23句。黒川検事長であることは一目瞭然。お友達、私情、利益誘導がここまであからさまにやれていいのだろうか? 恥を知ることのない為政者。これが漫画だったら、秋田書店の編集者がネームを書き直すだろう、「こんなのあるわけない」と。そう考えると、今や現実が漫画以下になっている。『論語』は、孔子の就職活動の記録である。君子のあるべき姿を説いて、諸侯に召し抱えてもらいたかった。ところがどっこい、君主としては、こんなまじめでウルサイ奴がブレーンとして身近にいたら、やりにくくて仕様がない。孔子が就職できないのは、結局当然だった。(だからといって、現在官邸でアベノマスクとか推奨しているマンガのような秘書官さんたちが、孔子様に勝るブレーンだと言うつもりは毛頭ない。)
26句。前の句がアルパカなので。それで、夏の短句で、恋でなければならない。さあ、これは困った。行きつけの繁ずしの女将さんに相談したが埒があかない。そもそも定年退職したジジイが恋の句なんて・・・。歳時記で「雹」をみて即決。バラバラっと降ってきた雹に驚いてアルパカは畜舎に殺到して濃厚接触。彼女はキャッと言って、花屋の店先に身を隠す、あるいは車に戻ってバタンをドアを閉める、てなところでしょうか。「濃厚接触」というコトバは、ぜひ使ってみたかった。
29句。クサリ橋は、ドナウに架かる最も美しい橋。前句に青髯があるので。バルトークの『青髯公の城』をブダペストの歌劇場で鑑賞した帰路、この橋にかかると、冬の月が河面に乱反射している、というつもり。27句が映画『ヴェニスに死す』を踏まえていることは分かりますか? ビョルン・アンドレッセンのタッジウ(美少年)に惚れたグスタフ・アッシェンバッハの物語――結局、七緒の持ちかけた濃厚接触は却下されたみたい――。アッシェンバッハを演じたダーク・ボガートは昔々、映画『わが恋は終わりぬ』(song without end)でフランツ・リスト役を演じていた。あの「カンパネラ」の格好良かったこと。

 

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