二期会『こうもり』
不思議なアデーレだった。K. A. さんはなぜアデーレになったんだろう? 高音があと半音昇りきらない。とにかく『こうもり』のアデーレは、それを見に(聴きに)行く目玉だ。ほかに二期会には歌手がいないのだろうか? 1980年ウィーンのシュターツオーパーのジルヴェスターで歌ったグルべローヴァがいかに凄かったか、再認識となった。アデーレは初々しく、無邪気で、しかし生まれつきどこか高貴で、女中にはもったいない、ような娘でなければ。でもK. A. さんは女中でぴったり、の感じだった。(失礼ながら。)
フロッシュの森公美子も、ブーでした。CDB(むかし『時間ですよ』で悠木千帆らが踊ったチ○/デ○/ブ○)ぶりで笑いを取ってはいたけれども。果敢なトライは結構ですが、彼女を起用する狙いが不明。挫折したオペラ歌手の瞬間芸なんて、聞きたくもない。せっかく日本語でやるんだから、フロッシュは古舘伊知郎とか久米宏とかが、毒をはらんだ時事評論で客席を沸かせなければ。(新国立劇場とはちがう、民間の二期会なればこそ、やれるはず。)
それ以外は結構でした。アイゼンシュタインの小林氏は、脂ぎったブルジョワ中年を好演。フランクの杉浦氏も、どでかい中年ぶり。ヨーロッパの歌手とちがって日本ではデコボコ、つまり体型の大小があまり出ないのが難点だったけれども、この頃はデコボコが出せるようになったのかも。めでたいこと。
木下美穂子のロザリンデも文句なし。とりわけ仮面をつけた2幕はすばらしかった(ご免なさい)。あの口紅の赤は、格別でした。おそらく資生堂でもカネボウでもない、ものすごく扇情的な赤の口紅。どこのブランドなのか?