Wilhelm Fink 社から著書が刊行されます
“Meinen Schweizer Aufenthalt wohlgefällig zu verbuchen …”
という長ったらしいタイトル。
これはムージルがチューリヒのルジュンヌ牧師に宛てて書いた手紙の一節からとったもの。
「スイス人は手堅く判断するので、死去した作家には信義を守るのです、ケラー、マイアー、リルケ、あるいはホフマンスタールであれ。いつの日か人びとが、わたしがスイスに滞在したことを、快いエピソードとして書き記すだろうと、わたしはほぼ確信しています。でも、まず作家ムージルの死を待たなければならない、生きるためには。これはまことに、存在論的な曲芸です!」(1939年9月24日)
ムージルがこの曲芸をどう演じたかは、2042年に明らかになるだろう。
€184という高額書籍。その理由は、多数のカラー図版にある。ジュネーヴ国立文書館が保管する、約140枚のムージル秘密文書(と、ボクは勝手に呼んでいる)がこの本で公開される(2012年までは非公開だった)。主な内容は、亡命者をできるだけ早く国外へ出したいスイスと、滞在許可の延長を求めるムージル夫妻とのやりとり、この夫妻をサポートする人々や組織の連絡文書である。
ほとんどがフランス語。シュテファン・イムホーフ氏(ジュネーヴ)が独訳してくれて、それをクリストフ・ホフマン教授(ルツェルン大)とそのチームが補正。クラーゲンフルトのシュトルッツ博士が全面的にドイツ語を補正、細部についてはカール・コリーノ(テュービンゲン)が助言をくれた。ほぼ3年がかりの国際的ビッグプロジェクト。
ぜひ温かい目で見守ってください。