歌仙「花ニラ」の巻
白塔歌仙会第四五二回例会「花ニラ」の巻。
令和 六年四月一日 首、令和六年四月十六日 尾(文音)
hananira
花ニラの群れ咲く処風の立つ 和子
丘を囲んで土筆の円陣 恆雄
入学式前に教室掃除して 悦子
五十音表も地図も新調 七緒
うたいましょぼーんのような月ですよ 笈羅
針の煌き屋上流れ星🌠 果穂
雲間には邯鄲の声透き通り 恆
そろそろ夫(つま)の帰宅の時刻 和
どうにでもあとはするからはよ逃げて 七
*落語「紙入れ」から。実体験ではありませぬ。
シェルターの名は無憂安穏 悦
古本に意味深長な手書きメモ 果
思いがけない儲けとなった 笈
月面へショートパンツでペット同伴 悦
豊穣の海の渚で泳ごう 恆
快眠と快食あれば機嫌好し 和
ニューヨークには黄金のトイレ 果
関白が茶杓で掬う花の屑 七
*秀吉の黄金の茶室は、三畳間ほどだったという。あちこち移動した。
時には、紛れこんだ花びらを掬ったかも。
子等への土産キサゴを拾う 笈
陽炎の退る尾追いつ登り坂 恆
あの八幡も本庁離脱 悦
磯伝い七里の道を行くもよし 笈
江ノ電走る曽っては戦さ場 和
チリチリとコチ来るチワワマント着て 果
露西亜掠めたクリミアの冬 七
*チェーホフ「犬を連れた奥さん」はダブル不倫の話。出合いはクリミアのヤルタ。
巌の上でんと構えて見下ろして 笈
潮騒迫るレスボスの島 恆
掌を握るフォークダンスにときめいて 和
男子校にはレコードもなし 七
*仙台一高は男子校。フォークダンスなんかなかった。当時東大の女子率は1,6%。
月は留守ゴッホの夜のカフェテラス 果
糸杉の枝鵙の早贄 悦
奥津城や落葉の果てに浮かびけり 恆
小舟で待つはフェリーニの永遠 果
巨舶往く全天窓と電飾と 七
*フェリーニの「アマルコルド」の一場面。町民が小舟を連ねて沖合に出て、豪華客船レックス号(Rex=王様)を待つ。オジサンは「Viva Italia!」と叫ぶ。
洩れくる曲はムーンライト・セレナーデ 和
警報のやんでキーウの花の宴 悦
目には高楼耳には雲雀 笈
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