今月の歌仙『囀りをくるみ』の巻

白塔歌仙会の今月の例会が終りました。
第451回三月例会『囀りをくるみ』の巻です。
no. 451. may2024. saezuri.

所々個別に見てゆきます。(なお、ウは裏、ナオは名残の表、ナウは名残の裏、の略です。歌仙はまず「表6句」で始まり、「裏12句」でひとくぎり。名残を惜しんで、再度「名残の表6句」「名残の裏12句」で歌仙36句が出来上がる次第。

囀りをくるみ不動の大樹かな        悦子
   土手にひっそり犬のふぐりが      笈羅 (個人的コメント。脇句に「ふぐり」は(?)。
古池や蝌蚪の円陣拡がらむ          恆雄
   いくぞ、おー!と散るグラウンド    七緒 (円陣組んで、チームがポジションに就く。)
歌劇場真如の月にコロラトゥーラ      果穂
   菊人形も聞耳を立て            和子
ウ  ドア開けるほんのり優しく柚子匂う    笈
   あこがれの君髪をなびかせ         悦
ズラミート楽の音に乗り昇天す      七 (パウル・ツェランの「死のフーガ」の最終聯に「君の金色の髪マルガレーテ/君の灰色の髪ズラミート」とあります。ツェラン研究家の悦子さんに合わせて。)
   悉曇貫くヤコブの梯          恆 (悉曇ーしったんーとは、梵字の字母とそれが表す音声の総称。恆雄さんの博学には苦労します。)
誰もいぬエスカレーター上り降り       和
   デパ地下へと誘われる午後       果
お目当ては鮎の求肥の食べくらべ     七 (京都の「若鮎」の求肥の味は、店によってものすごく違う。「若鮎」は春の季語なので、鮎としました。)
    月の出前に蛍灯ともす               笈
転寝にカワニナ捕らえ夢の果て      恆
 川の向こうに白亜の館        悦
花吹雪揺らぐ影やら光やら       果
 熊穴をでて市街に現る        和
ナオ 啓蟄といえどこの我蟄居中       笈
 この頃得意なパラパラチャーハン   果
平成も遠くなりけりガングロも     悦 (むかし流行ったパラパラを思い出して。)
 電車で本を読んでいたころ      七 (今は猫も杓子もスマホをいじっていますが。) 
賀状書く賀状仕舞いの挨拶に           和
 陽を浴びてなお凍蝶うごかず     恆
瑠璃色の鳥のブローチ襟につけ     悦
 菩薩に紛う能登の炊出し       七
印度にはエロティックな神ありき    果
 どこ探しても見つけられない     笈 (笈羅さんにはカジュラーホの画像を送っておきました。) 
宵の月明日の試合の秘策あり      和
 眠る児護るか蟋蟀の声        恆
ナウ もしトラに怯える惑星銀漢に    七 (「もしトランプが大統領に再選されたら」。国境に壁を造るかも。大量の難民が発生する第三世界をあのように工作したのは誰なんでしょう。) 
 各所に現る陰謀拠点         果
プッチンと潰す楽しみ商品化      笈
 親の居ぬまにプリンを三個      悦  
はろばろと波寄せ来たる花の雲     恆
 制帽いろいろ遠足の生徒       和
 

連衆:悦子、笈羅、恆雄、七緒、果穂、和子
令和 六年三月一日 首、令和六年三月十六日 尾(文音)