一年ぶりの調律
やっと調律してもらいました。本業が忙しくて、なかなかできなかった。前回は昨年の12月23日だったので、ほぼ一年ぶりの調律。調律師ISAMU. H氏は「おー、10下がってますね」と計器を見ながら。10とは10セントのことで、100セントで半音になるとのこと。1年間で半音の1割が低下したということになる。「それは何という機械ですか?」と訊いたら、YAMAHA Tuning Scope PT100 だとのこと(市販されていない)。これはもちろん一音の振動数をスケールで表示するのだが、すごいところは、下のウィンドーで平均律とかミーントーンとか調律の指定振動数を選べること。そのなかにヴェルクマイスターIII(Werckmeister III)もある。つまり平均律と純正律の間をとった振動数なのだそうだ。(内田光子のモーツァルトのCDなどが、このヴェルクマイスターIIIの音なのだとか。)調律師さんの話は奥深く、面白い。
「この辺の音が、すぐに止まってしまいます」とボクは中高音域のキーを示す。ふつう、叩いたら「ポーン」と鳴って、しばらくしてから減衰するのがピアノの音。ところがこの「ナンチャッテ・ピアノ」は、すぐに消えてしまう。野谷先生の言うように「最後まで音の面倒を見」たくても、音が即死したのでは面倒を見ることもできない。ISAMU. H氏によると、ダンパーの所為(せい)だという。打弦距離が短いことは、このブログですでに述べた。それだけでなく、そもそもコンソールはキャプスタンが無い分だけ、背が低い。アクションのなかのダンパーのシャフトも短くなる。かりにシャフトが長ければ、ダンパー(消音装置部分)が弦にぴったり付くけれども、短いシャフトだと、どうしても斜めに付くので、完全に消音できない。ペダリングの際には、こんどは斜めに消音フェルトがかかっているから、きちんと解放できない。いやはや、コンソールは、まともなピアノとはかなり違っているようだ。
「この辺の音が、半分死んでいるみたいです」とボクはやはり中高音域を示す。「フレームのシャフトに近い弦は、こうなります」とのこと。
つまり鋳鉄のフレームが、どうしても二本、響板の手前で弦の前に立ちはだかることになる。そこでは(他の部分とちがって)弦の振動が響板に伝わりにくい。いわば仮死状態になる。ヤマハなど立派なピアノの場合は、このフレーム付近の仮死状態の音を確定しておいて、ほかの元気のいい音を(ハンマーに細工するなどして)殺して、バランスをとるのだという。それに対してわが家の問題児、Steinbuhler-Walter社の7/8サイズは、元気なはずの「ほかの部分」が仮死状態なので、フレームに邪魔されるゾンビ部分は、ゾンビのままにするほかないとのこと。どうですみなさん、ふだん当たり前のように弾いているヤマハやカワイのピアノが、どれだけちゃんとしているか。ボク( Kurze Finger )のように余計な苦労をしないで済んでいるピアニストがどれだけ幸福か。
それでもさすがに調律のあとは、ずっと良くなりました。あれ、オレって上手いのかも、と錯覚するほどです。