エロディアーデ(二期会)

Bunkamuraオーチャード・ホールでのエロディアーデ公演(二期会HPより)

Wien Staatsoperのポスター

エロディアーデ(二期会)4月28日を観ました。
セミ・ステージ形式だから、舞台の左袖にハープが二台。ハープの爪弾きもよく聞こえたけれども、金管のピッコロとかホルンもよく聞こえた。カーテンコールではアルトサックスの女性が呼び出されていた。わが家のステレオの百倍いい音(あたりまえだ)。時たま弦がよろめいたりしたけれども。まずは音の満漢全席。東フィル様、ご馳走様でした。
まるでナンバー・オペラのように、順番のはっきりした進行。マスネは半終止の連続(?たぶん)だから、それなりの工夫があったのかも。
主役はもちろんタイトルロールのエロディアーデ。池田香織は健闘してたので拍手。とはいえ(根はいい人なんだろうな)と思わせるたたずまいがNG。(失礼。)毒婦、毒母、と称されるように、重大な女の悪役。バリトンでいうと『トスカ』のスカルピアとか、『オテロ』のヤーゴのような、憎みきれない悪でないといけない。悪女役としては、ローエングリンのオルトルートとか、マクベス夫人とか。そういうずっしりとした悪役の女性が、きっと二期会にはいないのでしょうね。(お世辞です。)
むかしむかし、ボクは1995年の2月にウィーンのStaatsoperでエロディアーデを観ました。ポスターを見直すと、指揮はヴィオッティ。ジャンがプラシド・ドミンゴ。エロディアーデはアグネス・バルツァ。サロメがナンシー・グスタファソン。エロデはフアン・ポンス。25年前に一度聴いただけだけれども、エロデの「サーロメー、サーロメー」という嫋々たる叫びは、耳に残っていた。初老の男の執念には、身につまされるものがある。それを聴いたエロディアーデの激怒。25年前のStaatsoperには字幕がなかったので、あまりフォローできなかった。(今は液晶画面で日本語対訳が瞬時に読める。)
ヨハネ(ヨカナーン)は実際に首を斬られた預言者と見なされているらしい。ボルツァーノには「ヨハネ教会」があり、内部はきわめて手の込んだヨハネ礼賛の画像で飾られている。えーと、つまり、ナザレのイエスは首を斬られていないのだ。十字架に数時間打ち付けられていただけであって、そこで死亡したかどうかは不明なのだ。(磔刑というのはきわめて残虐な刑で、一週間から10日ぐらい放置されて、受刑者は苦しみ抜いて死ぬ)。ヨハネが斬首されたのかどうか、も怪しい。民衆の支持の厚いヨハネの首を、たかが小娘のリクエストによってエロデが斬らせたかどうか。――むしろナザレのイエスの受難の前奏曲として、作られたのではないかと考えることはできる。福音書にはそれなりの記述があるけれども。